戸倉山(とぐらさん)

1681m
2004. 06. 05

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東日本の入梅宣言も秒読み段階となった週末、中央アルプスと南アルプスに挟まれた天竜川の流れる駒ヶ根市に有って、別名伊那冨士と呼ばれる美しい戸倉山を尋ねました。麓から、山の姿全体は見る事が出来なかったのですが、西峰から望む甲斐駒岳、仙丈岳、又、東峰頂上から見える北アルプス連峰の全景は素晴らしく、快晴に恵まれた戸倉山は、1歩登るごとに、この山に伝わる民話の世界に誘ってくれました。

上の森の鎮守様、ここまでは車で入れました。鳥居が金属で出来ていたのには少々興ざめ・・・・

鳥居の前を少しのぼるとY字路になっていて、左に登山口入口の標識が有りました。しかし良い天気だラッキー!

真っ直ぐ空に伸びた杉の林が美しい。暫く立ち止まって天を仰いで見る。ギーギーと鳴いているのはなんだろう。

手入れの行き届いた杉並木の道をジグザグに登ってやっと「2合目」。

ミツバツツジの保護地域になっていましたが、花はもう盛りを過ぎたのでしょうか?花は見え無いよ〜!

「お湯立場」の標識が有るヤヤ開けた場所に着きました。水がチョロチョロと流れていました。

五合目を過ぎた時、途中に休憩の為のベンチが有り、林が切り開かれて中央アルプスが望めました。良い眺めだッ〜!ここで一休み・・・

ずっとうるさく鳴いていたのは蛙だと思っていたら、標高が高くなっても、さらにうるさく聞えるので同伴者は蝉だろうと言いますが、まだ6月なのに、もう蝉が鳴いてるなんて信じられない・・・・・

明るい尾根道に出たら大きな枝振りの良い赤松が有りました。「猿の松」の標識がありました。この松に纏わる民話を下に紹介します。拡大写真

その近くに「天狗の岩」と言われる大きな石が有りました。拡大写真

「7合目」この辺りの尾根道は道を挟んで右側が赤松林。左側が、木の幹の粗い落葉樹(名前が分からないけど)とはっきり半分に分かれているのが面白かったし不思議だった。拡大写真
「猿(ましら)の松」
あそこのミズナラの木のじき上のほうに、松の木が有る。現在有る松は、後から2代目に植えた松です。その松のところへ猟師が来てもう1日中歩いたけれどウサギ一匹獲れなくて、もう日が暮れる。あわてて帰ってきた。そうしたら、松の木の根っこに大きな猿がおって、それを、うとうとしたら、もう腹をさすっちゃ、頭を地べたにつけて、みごもっていることを知らせたんですね。もうすでに、引き金に手をかけたんだけど、かわいそうだと思って撃たなかったんですね。それで、家へ何にも持たずに帰ってきた。その時に思った事は、猿がみごもっているから勘弁してくれとゆう仕草をした。自分の妻がやはりみごもっていた。それで瞬間、引き金を引くとき、それを思い出して、何か祟りが有ると可愛そうだと撃たなかった。そうしたら、今度猟師の妻が、どえらい産後の肥立ちが悪くって、死ぬほど病んで、猟に出られないわけです。家(うち)を空けられんもんで、猟に出られなかった。食べるものが無くて、どうしようもなくて、日乾しになるところだった。そうしたら,あるとき、ガヤガヤ猿の鳴き声がする。すると、猿が木の実、どんぐり、栃の実、ぶどうの実とか、たくさん持って来て、家の前に置いて、良いことをしたっちゅうことで,「キャツキャツ」と喜んで帰っていく。その時猿を拝んだという。お蔭で病気も回復して来た。それから,猿はいっぺんも撃たなかったという。そこで猿が遊びに来る様になった。それは,頂上から下がった所に松の木が今でもあって、大きな石があって良い所です。その猟師は甲府の人だという。土地の人じゃなくて夫婦で中山の1番上のほうに住んでおった。

語り手(明治42年生まれ駒ヶ根市在住 竹村康雄さん)

急に広い場所に出て、東屋があり天井に大きな鍋や釜がぶら下がっていました。おもしろい!勝手に使っても良いのかな〜?

お誂え向きに、側には金名水と名前の付いた水場も有るし・・・・冷たくて美味しい水でしたよ!

「金名水」を飲んで元気を取り戻し、ひとふんばりしたらすぐに頂上に着きました。木々に囲まれた頂上には、数体の石碑が有って、お金がいっぱい溢れていました。登山の無事を祈ってお参りしたのでしょう!ワーーッ!中央アルプスが良く見えるーー!拡大写真

西嶺から少し下ると立派な非難小屋が有って3畳程の部屋に花ゴザが敷いてありました。

非難小屋から五分くらい登るともう1つの峰「東峰」頂上に着く。一等三角点はここに有った。真新しい薬師如来が南アルプスの方を向いて鎮座していた。チョットビックリ!
拡大写真

東峰の頂上から見える南アルプスは左から鋸岳、甲斐駒ケ岳、仙丈岳。手を伸ばせば届きそうです!お昼の準備をしていたら、後2組がきました。静かで落ちついた良い場所です。
拡大写真

下りは「猿の松」の側からロープを伝って下りる「沢下りコース」にしました。台風の後整備をして無いから注意する様看板が有りましたが、急斜面をロープに振られながら下りると、所々、大木が登山道を塞ぎ、倒木をくぐったり、跨いだり、よじ登ったりで、3倍疲れちゃった。

やっと道らしい場所に出たと思ったらそこには「差し鴨居のミズナラ」と呼ばれる大木が有って、その周りには真赤な「クリンソウ」が自生していました。大木を見上げると2つの枝が繋がっているように見えます。どうなってるんだろう!物凄く不思議!下に民話を掲載しました。拡大写真 差し鴨居部分 看板
「差し鴨居のミズナラ」に別れを告げ、下りを急ぐと間もなく、「日向滝・日影滝」の看板があリました。120mと矢印があったので、せっかくだからと、矢印に向かって登って行くと、それらしき滝が有りましたが、後で考えてみたら、何だか違うみたいですね!滝はもっと上の方まで行った所だったのでしょうか?林道に出て、梅雨ガそこまで来てるなんて考えられないくらいの陽光を浴びながら道端の山菜を物色していたら、可愛い蛇が!ギャーーーッ!(ホントは大嫌いーーー!)
天狗の止まり木」
岡のあそこに一本だけのネミズナラッつうんですかネその大木がある。もうそれは大きなもんです。上(かみ)の森にもあるでしょう。あれもみずならです。天狗の止まり木ッつう奴は、戸倉のあれからチョット入った所、竹の沢の入りというところへ降りる所。差し鴨居になっている。ドッチの木がくっついたかわからない。元も裏も無いような木で、たいがいの木はコッチから出たッつう事がわかるでしょう。それがドッチが出てくっついたかわから無いやつなんです。さしがもいネ。それが天狗の止まり木なんですね。それでそのマア,あちらの新潟ね、新潟のほうから作男に来とった人、その人はチョットまあ、どっちかっていうとのんびりやでネー。チョット抜けとるとかナンとか言われとったんですよ。そうしたら、そのひとが、その木の下で昼寝をしとった。そうしたら、名前を呼ばれたので、ビックリして見たけれどどこにも誰もおらん。そうしたら「コッチだコッチだ」と手招きしたらしい。それから見たら天狗様がそこに止まっておった。そのさしがもいに・・・・・以下省略
その作男と天狗のだまし合いが滑稽な話ですが、差し鴨居の木は神様の止まり木といい、伐ると祟りがあると言って神聖視していたらしいです。実際に伐って不幸を招いた例があるという土地の古老の話です。語り口がナンとも風情が有って良いでしょ!
戸倉山は標高も余り高く無い里山という事だったので、こんなに沢山の花の有る山だったのには嬉しい驚きでした。この季節に山に行たことが余り無かった事もあって、Nonkyにとっては、はじめて見る花も多く、名前の分からない物が有りますし、樹木の花は秋になればきっと実を付けるのでしょうが、どんな実を付けるのかな〜!と、思ったりしました。写真をクリックして大きな画像でごらん下さい。

トラノオみたいですが、怪しい色でビックリです。花拡大

オオマムシグサ
花拡大

フタリシズカ

木いっぱいに咲いて綺麗でした。
花拡大

こんなに小さくても精一杯さいてるんですネ!

マイヅルソウ、小さくて可愛いです

樹木の花です。なんだろう

キジムシロかな?似た花が多くてわからないです。

ミツバツツジ、戸倉山には沢山自生しています。

ヤマアジサイ?ウツギかな?

クリンソウ さくら草に良く似ています。

フウロのような花びらでしたが・・・・

良く見ると花の下にチョウチョが止まってるように見えます。

ウツギ、大木に一面に真っ白く咲いて眩しいほどでした。
戸倉山は、山のガイドブックにも載ってないし、登山地図にも詳しく載ってないしで、やっと、長野県警山岳部の方のホームページからダウンロードした案内図と説明で予備知識を持つ事が出来ました。そう言う事情だったので全然期待しないで夏山へのトレーニングにでもなれば良いかな!と言う気持ちで登ったのですが、1歩登山道に踏み込むと、たくさんの花が咲き乱れて、登山道は一合目ごとに標識を付けて整備され、民話の舞台がそのままの姿で残っていて、民話をベースに戸倉山登山の思い出を甦らせると、さらに印象深く、忘れられない山となりました。

「猿の松」の標識を見た時、どんないわれがあるのだろうと興味を持って、駒ヶ根市観光協会のほうに問い合わせしましたら、この地方と、戸倉山に関する民話の数々を送ってくださいました。有難うございました。ここに掲載した民話以外にも沢山有って、全部紹介したいのですが、ページの関係上、割愛させていただきました。
もし戸倉山に登ることが有りましたら、1歩1歩と進むごとに民話の世界を感じて見てください。又違った山の面白さを味わえる事でしょう。

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